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館内放送システムを構築するときの基礎です。
一般のオーディオシステムと館内放送システムは以下の点が異なります。

1.モノラル&設置するスピーカー数が多い。
2.アンプからスピーカー迄の配線長が長い(10m以上は普通)。
3.非常放送と兼用することが多いので、音質よりは明瞭度が求められる。
4.音楽はBGM程度、音声の再生が主となる場合が多い。

1と2からは、ハイインピーダンスのスピーカとそれに対応したアンプが必要となります。
※詳しくは後述。

3と4からは、音声を再生するのに適した周波数特性のスピーカーが選ばれる事が多いです。
ラッパの形をしたホーン型スピーカ等は音楽再生には向きませんが、音声の再生には適しています。
※ホーン型は再生音の指向性も高いです。

まずは聞き慣れないハイインピーダンスについて…

コンピューター系のお仕事をしているとあまりアナログの電気回路とかは出てきませんが、場合によっては必要となることもあります。
ただし、今回のハイインピーダンスのスピーカー接続という話は、そんなに難しい話ではなくて、長い距離の電力転送の仕組みと全く同じだと思ってください。

簡単に書くと、『金属線を使って電力を伝える場合、電線の電気抵抗による電力ロスを防ぐため高電圧で電力を伝える』という事です。

電力=電圧×電流ですから、同じ電力を伝える場合、電圧を高くすると流す電流は少なくできます。
流れる電流が少なければ、抵抗値が上がっても電圧低下が少なくなります。
※ロスが減るって事です。電圧=電流×抵抗ですから…
※郊外にある大きな鉄塔で送電してる電圧は66kVとか154kVとかすごい高電圧です。

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このように、一組の電線に数珠つなぎにスピーカーという抵抗を繋ぐことを並列接続と言います。

並列に繋いだ場合には、各スピーカーには同じ電圧がかかります。
つまり、ハイインピーダンスでの接続というのは定電圧駆動と考えても間違いではありません。

一般的な館内放送システムでは、商用電源が100Vであることからスピーカーにも100Vという電圧をかけています。しかし、スピーカーはハイインピーダンスですので流れる電流はわずかですから、そのままではスピーカーを駆動して音を出すことは出来ません。
そのため、スピーカー側でトランスを用意し、電圧を下げることでスピーカーを駆動できる電流を取り出すような仕組みになっています。
※実はこのトランスを通過することによって、音質が激しく劣化してしまうためオーディオ用システムではハイインピーダンスのスピーカーは使用されません。

スピーカーだけではなくアンプ側にもハイインピーダンスのスピーカーへ接続出来るようになっていなくてはいけません。言い換えるとオーディオ用のアンプにハイインピーダンスのスピーカーをつないでも音が出ません。

それでは最後に、1つのアンプにどれだけスピーカーが接続出来るかの計算方法です。

ハイインピーダンスのスピーカーを接続出来るアンプには必ず『スピーカーの合成インピーダンス』が表記されています。
接続するスピーカ全体の合成インピーダンスは、上の図にある計算式で求めて下さい。
その結果が、アンプの『スピーカーの合成インピーダンス』より大きい事が必須です。『スピーカーの合成インピーダンス』より小さくなると、アンプに流れる電流が多すぎてヒューズが飛ぶか、最悪アンプが燃えます。
※もちろん、1Ωでも超えたらダメというわけではありません。設計の許容度もあるのですが、1割くらいまでなら大丈夫です。2割以上少ない場合は、素直に1ランク大きな出力のあるアンプを選んで下さい。

簡易的に計算するには、設置するスピーカーの定格W数を単純にスピーカーの数分合計して下さい。
それがアンプの定格W数を超えなければ大丈夫です。
※ただし、スピーカーのW数の合計があまりにもアンプのW数より小さいと、アンプのボリューム上げるとあっさりスピーカが壊れるので注意して下さい。

 計算例
・アンプ  :合成インピーダンス330Ω以上(定格30W)
・スピーカー:定格入力6W、入力インピーダンス:10kΩ(1W)、3.3kΩ(3W)、1.7kΩ(6W)

この場合、スピーカー側はインピーダンスが切り替え可能ですが、まずは定格が6Wですのでインピーダンスは1.7kΩで計算します。
※入力インピーダンスを上げるとW数が減ります。つまり音量が小さくなります。

簡単に計算してみましょう。1.7KΩのスピーカーが、
2台だと、1/1700 + 1/1700 = 1/Rt = 2/1700 = 1/850
3台だと、1/1700 + 1/1700 + 1/1700 = 1/Rt = 3/1700 = 1/566.66666…
4台だと、1/1700 + 1/1700 + 1/1700 + 1/1700 = 1/Rt = 4/1700 = 1/425

このように、1.7KΩの1/2, 1/3, 1/4と合成抵抗値は下がっていきます。
5台ですと、1.7KΩの1/5 = 340Ωとなりますので、指定の330Ω以上にマッチします。

つまり、この30Wのアンプには6Wのスピーカーが5台接続できるという事になります。
※簡易計算だと6W×5台=30Wですから…

入力インピーダンスが違うスピーカーを混在したときには、簡易計算によらず合成抵抗を計算することをお勧めします。

 Attention

流れる電流はわずかですが100Vという電圧がかかっているので、アンプの電源を切らないでスピーカーコードの工作は危険です。必ずアンプの電源コードを抜いて作業して下さい。
※アンプの電源が入った状態で、スピーカーコードをニッパ等で切ると、回路がショートして最悪アンプが壊れます。